自立支援医療制度
精神科への通院やお薬にかかる費用「これからも通えるかな…」と不安に感じることはありませんか?
そんなときに使える制度のひとつが、「自立支援医療制度(精神通院)」です。
この制度を利用すると、精神科の通院にかかる費用の自己負担が通常の3割 → 1割になります。
精神科・心療内科に継続して通院が必要な方の医療費負担を軽くする制度で、医療保険を使った上で、自己負担がさらに1割に軽減されます。
通院にかかる診察料・処方せん・薬局でのお薬代が対象で、対象となるのは、「指定された医療機関・薬局」の利用に限られます(当クリニックは申請可能です)
対象となる方
- うつ病、不安障害、パニック症、統合失調症、発達障害などで継続的に通院中の方
- お薬を処方されている方
- 経済的な理由で通院継続が不安な方
障害者手帳がなくてもご利用できます。
利用することでどれくらい負担が変わるの?
区分 | 3割負担のままの場合 | 自立支援を利用した場合(1割) |
---|---|---|
診察代 | 約1,500円 → | 約500円に |
処方せん・薬局 | 約1,200円 → | 約400円に |
合計(例) | 約2,700円 → | 約900円に(※月により変動あり) |
- 所得に応じて月額の上限額も設定されており、それ以上は支払い不要となる場合があります。
手続きの流れ
医師が制度の利用をおすすめする場合、申請をご案内します
① 当クリニックで診断書(所定の様式)を作成します(有料:5000円)
② 住民票のある区役所・市役所にて申請手続き
③ 約1〜2か月後に「受給者証」が届きます
④ 届いたら、当クリニック・薬局にご提示頂くと1割負担が適用されます
よくあるご質問
- 申請には何が必要ですか?
- 診断書のほかに、保険証・マイナンバー・本人確認書類が必要です。詳しくは市区町村によって異なるため、申請時にご案内いたします。
- 精神障害者保健福祉手帳がないとダメですか?
- 手帳がなくても利用できます。ご安心ください。
- 家族の扶養に入っていても使えますか?
- はい、保険証があればご家族の扶養内でも利用可能です。
- 申請後すぐに使えますか?
- 新規申請の場合は申請後、自立支援の原本が届くまでご利用いただけませんが、更新の場合は役所で受付印を押してもらった認定申請書をお持ちください。申請日より適用となります。
最後に
自立支援医療制度は、「安心して通院を続けていくために」使える、あなたの権利のひとつです。
ご不明な点や手続きに不安がある方は、遠慮なくスタッフまでご相談ください。
わかりにくい制度だからこそ、私たちがお手伝いします。一緒に、安心できる治療環境を整えていきましょう。
傷病手当金
「仕事をお休みすることになったけれど、収入がなくなるのが不安で…」「お金のことが気になって、治療に専念できない」そんな声をよくお聞きします。
じつは精神的な不調で休職が必要になったとき、収入の一部を補償してくれる制度があります。それが「傷病手当金」という制度で、条件を満たせばどなたでも申請することができる制度です。会社から社会保険(健康保険)に入っている方が、病気やけがで仕事を休んだときに、健康保険から支給してもらえるお金です。
休職中でも、ある程度の生活費を確保しながら治療に専念できるようにするための制度です。
主な条件(概要)
以下の条件を満たす場合に支給対象となります
条件 | 内容 |
---|---|
被保険者であること | 健康保険に加入している会社員・公務員・パートなど(※国民健康保険の方は対象外) |
業務外の病気やけがであること | 通勤災害や労災の場合は別の制度(労災保険)が適用されます |
連続する3日間の欠勤があること | 最初の3日は"待期期間"で支給なし/4日目から支給対象 |
医師により「就労困難」と判断されていること | 当クリニックで診断書・意見書を発行いたします(有料ですが保険点数として100点、ほとんどの方は300円程度でお作りできます) |
支給される金額と期間
- 1日あたりの支給額:過去12か月の平均給与の約3分の2(正確には「標準報酬日額の⅔」)
- 支給期間:最長で1年6か月間
- 実際の支給額は健康保険組合の算定方法により多少異なります。
通院頻度にもご注意ください
傷病手当金が「就労不能な状態」として継続支給されるためには、定期的な受診を続けていること=医師の診察が継続していることが必要です。
特に精神科の場合、2週間以上あいてしまうと、「就労不能の実績がない」と判断されて不支給となるケースもあります
支給継続を希望される方は、原則として2週間に1回程度の通院をおすすめしています。
体調が安定してきても、主治医の判断と支給書類の整合性が必要となりますので、通院間隔はご相談のうえで調整しましょう。
申請の流れ
① 勤務先の人事・労務担当へ相談(申請書類を受け取ります)
② 当クリニックで診断書または療養担当医師意見欄を記入
③ ご本人・勤務先・医療機関の記入をそろえて、保険組合へ提出
④ 審査後、指定口座に支給されます(初回は1〜2か月ほどかかる場合あり)
よくあるご質問
- 精神的な理由でも対象になりますか?
- はい。うつ病・適応障害・不安障害・双極性障害など、精神科の病気も対象になります。
- 会社を辞めたあとももらえますか?
- 条件を満たせば、退職後も一定期間、傷病手当金を受け取れる場合があります。(継続給付)
- パート・アルバイトでも対象ですか?
- 勤務先で健康保険に加入していれば、雇用形態に関係なく対象になります。
その他の制度も使えるかもしれません。
状況に応じて、以下のような制度が対象になる場合もあります。
- 障害年金(長期間就労が難しい場合)
- 特定理由離職者としての失業給付
- 生活福祉資金や自治体の生活支援
どの制度が合っているかは、病状やライフスタイルによって変わります。
ご不安な場合は、遠慮なくご相談ください。
最後に
「治すことに集中したいけれど、お金のことが気になって…」そんなお気持ちは、とても自然なことです。ご自身やご家族の生活を守るために使える制度があります。
どうか 一人で悩まず、まずはご相談ください。私たちは「治療に専念できる環境づくり」も、大切な支援だと考えています。
療育
「先生から"ちょっと気になる点がある"と言われた」「お友だちとのやり取りでトラブルが続いている」「なんとなく、集団の中で浮いている気がする」
そんなふうに、お子さん自身が困っているというより、"まわりとの関係の中で"うまくいかないことが出てきたというタイミングで、相談に来られるご家族が増えています。
そうしたとき、特別なことではなく、"ちょっとした手助け"として活用できるのが「療育」です。
療育って、どんなことをするの?
療育は、「発達支援」とも言われます。
お子さんの特性やペースに合わせて、安心できる環境の中で必要な力を育てていく支援のことです。
たとえば、こんな力を育てるお手伝いをします
- 人とのやりとりのコツ(気持ちの伝え方・距離の取り方)
- 集団の中での過ごし方(順番を待つ・ルールを守る)
- 自分の気持ちや行動をうまく調整する力(切り替え・落ち着き)
- 得意なこと・好きなことを見つけて、自己肯定感を育てること
療育は、「できないことを直す場所」ではなく、「その子らしく過ごすための土台」をつくる場所です。
療育はいつから、どこで、どうやって始めるの?
利用までの流れ(概要)
① 医療機関で相談・評価
成長・発達歴や心理検査から医師が発達支援の必要性を判断し、意見書(診断書)を作成します
② 市区町村の窓口で申請(通所受給者証の発行)
③ 療育事業所(児童発達支援など)と契約し、利用スタート
- 当クリニックでは、療育の必要性の判断、受給者証申請のサポート、事業所選びのご相談も可能です。
どんな療育があるの? どんなことをするの?
個別支援(マンツーマンでのかかわり)
「その子のペースに合わせて、じっくり人とのコミュニケーションの練習をしたい時」、指導員や療法士が1対1で関わります。集中しやすい環境で、基本的なやりとりや動作、感覚の調整などを行います。
主な内容例
- 「こんにちは」「貸して」「ありがとう」などのやり取り練習
- かんしゃくや気持ちのコントロール方法(視覚支援・絵カードなど)
- 感覚過敏や過敏さへのアプローチ(スキンシップ・道具を使った遊び)
- 手先の不器用さへの支援(ハサミ・箸・書字など)
小集団プログラム(数人での活動)
「友だちと一緒に過ごす練習をしたいときに」似た年齢・発達段階の子どもたちが数名で活動します。ルールのある遊び、順番・交代・協力といった集団内での社会性を育てます。
主な内容例
- ルールのある遊び(すごろく、かるた、リレーなど)
- 順番を待つ・相手に合わせる体験(グループ課題)
- チームで何かを作る・考える(工作・ごっこ遊び)
- 感情の名前・表現方法を知る練習
作業療法(OT)・言語療法(ST)などの専門療育
「体の使い方や言葉の発達が気になるときに」専門職(作業療法士・言語聴覚士など)が担当します。身体の動き、感覚、ことば、コミュニケーションなどに焦点を当てます・
主な内容例
- 姿勢の安定、手先の器用さ、体の使い方の練習(OT)
- 発音のくせ、言葉の理解・表出の力、会話の順番の練習(ST)
- 感覚統合アプローチ(回転遊び・バランス・触覚刺激など)
ペアレントトレーニング(保護者向け支援)
「子どもへの声かけや接し方を学ぶ」お子さんへの関わり方、行動の理由の捉え方を学ぶことで、日常のすれ違いやストレスが減ります。保護者同士の交流の中で、「自分だけじゃない」と気づけることも多くあります。
主な内容例
- 「ほめ方」「指示の出し方」「待つタイミング」などの実践練習
- 子どもの行動に困ったときの、気持ちの整え方
- 家庭でのかかわりの工夫(タイムスケジュール、視覚支援など)
就学・就労に向けたステップ支援(年長〜学齢期)
「先を見据えて、安心して社会に出ていくために」就学に向けた準備(集団参加・文字や数の理解・生活ルール)。高学年では、自分の得意・不得意を知り、自己理解を深める支援も行われます。将来的な就労支援につながる施設やプログラムもあります
いつまで続けられるの?
- 未就学児は「児童発達支援」
- 小学校〜高校生は「放課後等デイサービス」
- 就学前後に支援の内容が変わる場合もありますが、成長や状況に合わせて継続可能です
療育を受けるとどうなるの?
「今すぐ困っていることがなくても、まわりとうまく合わない場面が増えてきた」「苦手なことを"できるようにする"というより、"困らずにすむ工夫"を知りたい」
そんなときこそ、療育が役立ちます。
期待できる変化・効果
- 集団生活や対人関係がラクになる
- 学校でのつまずきや二次的なストレスを予防できる
- 自分の特徴をポジティブに理解できる
- 「どう声をかければ伝わるか」を保護者もつかめるようになる
将来の進路選び・支援の土台づくりにもつながります
大切なのは、「特別だから受ける」のではなく、「その子らしく、自信をもって育つために使える支援の一つ」として考えることです。
最後に
療育は、特別な子だけのものではありません。 「ちょっと気になる」「少し周囲と違うかも」
そんな"ちいさな気づき"をきっかけに、本人も保護者も安心できる場をつくっていくための選択肢の一つです。
ただ「できるようになる」ことだけを目指すのではなく、自分の気持ちを言葉で表現できること、人と関わることを楽しいと感じられるようになること、失敗しても安心できる経験、上手に失敗をする経験を積むことを大切にしています。まずは、ご相談からはじめてみませんか?