おかしいとわかっていても、同じ行動を繰り返してしまう

「何度も手を洗わないと気が済まない」「戸締まりを確認しても不安で繰り返してしまう」など、自分でも過剰だとわかっているのに同じ行動を繰り返してしまう場合、強迫性障害(OCD)などの精神疾患が関係している可能性があります。これらの症状は日常生活に支障をきたすことがあり、適切な治療が求められます。

心に現れる主な症状

  • 何度も確認しないと気が済まない
  • 汚れが気になり、過剰に手を洗ってしまう
  • ある行動をしないと不安や強い恐怖を感じる
  • 不合理とわかっていても、特定のルールに従わずにはいられない
  • 頭の中で同じ考えやイメージが繰り返される

体に現れる主な症状

  • 極度の緊張やストレスによる動悸や発汗
  • 睡眠障害(寝つきが悪い、途中で目が覚める)
  • 集中力の低下や疲労感
  • 筋肉のこわばりや胃腸の不調

おかしいとわかっていても、同じ行動を繰り返してしまうことで
起こりやすい主な病名

強迫性障害

強迫性障害は、ご自身の意思に反して不安や不快な考えが頭に浮かんできてしまうことで、日常生活に影響が出てしまう状態をいいます。こうした強迫観念を抑えようとしても抑えられず、無意味な強迫行為を繰り返すようになります。例えば、手が不潔に思えて過剰に手を洗ってしまうことや、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといったことがあります。 患者さん自身も、「そのような行動はばかげている」「意味がない」と分かっているのですが、やめようとすると強い不安が襲ってくるので症状を抑えることができなくなります。

強迫性障害の原因・症状

強迫性障害の発症にはセロトニンの代謝が関係しているとされていますが、詳しい原因は解明されていません。対人関係や仕事上のストレス、妊娠や出産などのライフイベントが発症のきっかけとなっている傾向があります。症状に関していうと、強迫観念と強迫行為の2つの症状が現れます。このうち強迫観念は、頭から離れない考えのことです。強迫行為は、強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為です。具体的には、下表のようなことが挙げられます。

強迫性障害の治療

強迫性障害の治療法は主に認知行動療法と薬物療法を組み合わせて行ないます。患者さんにもよりますが、抗うつ薬の一種(SSRI)が用いられます。症状が重いケースでは抗精神病薬が使われることもあります。認知行動療法ではとくに曝露反応妨害法が有効です。患者さんを、あえて強迫症状が出やすいような場面に直面させ、しかも強迫行為を行わないように指示します。例えば、汚いと思うものを触って手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し、施錠を確認するために戻らないで我慢するなど、強迫症状を引き起こす刺激に自分をさらしていきます。こうした課題を続けていくことにより、これまでずっと強かった不安が次第に弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくてもよくなっていくという流れです。強迫性障害においては、高い効果が認められています。