片付けや時間管理が苦手で、日常生活に支障がでている

片付けや時間管理が苦手で、日常生活に支障が出ることは、多くの人にとって悩みの種となります。単なる性格の問題ではなく、精神的な要因が関係していることがあります。日常生活に影響を及ぼす場合は、専門的な治療やサポートが有効です。

心に現れる主な症状

  • 片付けようと思っても、どこから手をつければよいかわからない
  • 何度も片付けを試みるが、すぐに散らかってしまう
  • 時間の管理がうまくできず、遅刻や締め切りの遅れが頻発する
  • 計画を立てても、途中で集中が続かず投げ出してしまう
  • 物事を後回しにしがちで、日常生活が混乱する

体に現れる主な症状

  • ストレスによる疲労感や倦怠感
  • 集中力の低下や注意散漫
  • 不安や焦りからくる動悸や胃の不快感
  • 睡眠不足や生活リズムの乱れ

片付けや時間管理が苦手で、日常生活に支障が出ていることで
起こりやすい主な病名

発達障害とは

まずご理解いただきたいのは、発達障害は生まれつきの特性であり、病気ではないということです。多くの場合、発達障害の特性はこどもの頃から現れますが、その頃は、その特性を個性の一つとして捉えられたり、周囲からフォローされたりするため、本人も周囲の人も発達障害と気づかずに大人になることも少なくありません。しかし、進学や就職で社会に出ると、人間関係は複雑になり、様々な人とコミュニケーションをとることになります。また、相手の表情からすべきことを察したり、周囲に合わせて行動したり、仕事を計画的に進行するなど社会性を要求されます。このようなときに、潜在的に持っていた発達障害の特性が浮かび上がってきて、人間関係や仕事でつまずいてしまい、そのとき初めて発達障害に気づくケースがあります。
発達障害の特性は、環境との相互作用によって欠点になることも長所になることもあります。苦手なことは工夫することによって生きやすくなることもありますし、得意なことで大きな力を発揮する人も少なくありません。まずは、発達障害のある人もその周囲の人も、発達障害について正しく理解することから始めましょう。
発達障害は特徴によっていくつかのタイプに分類されています。具体的には、ADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)、LD(学習障害)、発達性協調運動障害などです。

発達障害の原因

現時点では全ての原因が特定されたわけではありませんが、脳機能が発達していく過程においてアンバランスさが生じることで起きると考えられています。本人のやる気や努力不足、保護者の育て方などにより起因するものではありません。そのため、ある特定の分野においては非常に優れた能力を発揮する一方で、別の分野については極端に不得手ということがみられるようになります。多くの人間にはある程度の得意不得意がありますが、「発達障害」がみられる方の場合、その差は日常生活に支障をきたすほど大きいと言われています。

発達障害の治療

発達障害は、生まれ持った脳の機能の特徴と言えますので、それぞれの特徴を理解しつつ、日常生活への影響を減らしていくことが治療の基本となります。治療は「心理社会的治療」と「薬物治療」に分けられ、一人ひとりに合った治療計画を立てます。 まずは、環境調整や認知行動療法、カウンセリングなどの心理社会的治療から始めて、対人関係能力や、コミュニケーションスキルの習得、社会ルールの学習などを目指します。また必要に応じて薬物治療も一緒に行います。

強迫性障害

強迫性障害は、ご自身の意思に反して不安や不快な考えが頭に浮かんできてしまうことで、日常生活に影響が出てしまう状態をいいます。こうした強迫観念を抑えようとしても抑えられず、無意味な強迫行為を繰り返すようになります。例えば、手が不潔に思えて過剰に手を洗ってしまうことや、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといったことがあります。 患者さん自身も、「そのような行動はばかげている」「意味がない」と分かっているのですが、やめようとすると強い不安が襲ってくるので症状を抑えることができなくなります。

強迫性障害の原因・症状

強迫性障害の発症にはセロトニンの代謝が関係しているとされていますが、詳しい原因は解明されていません。対人関係や仕事上のストレス、妊娠や出産などのライフイベントが発症のきっかけとなっている傾向があります。症状に関していうと、強迫観念と強迫行為の2つの症状が現れます。このうち強迫観念は、頭から離れない考えのことです。強迫行為は、強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為です。具体的には、下表のようなことが挙げられます。

強迫性障害の治療

強迫性障害の治療法は主に認知行動療法と薬物療法を組み合わせて行ないます。患者さんにもよりますが、抗うつ薬の一種(SSRI)が用いられます。症状が重いケースでは抗精神病薬が使われることもあります。認知行動療法ではとくに曝露反応妨害法が有効です。患者さんを、あえて強迫症状が出やすいような場面に直面させ、しかも強迫行為を行わないように指示します。例えば、汚いと思うものを触って手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し、施錠を確認するために戻らないで我慢するなど、強迫症状を引き起こす刺激に自分をさらしていきます。こうした課題を続けていくことにより、これまでずっと強かった不安が次第に弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくてもよくなっていくという流れです。強迫性障害においては、高い効果が認められています。

適応障害

人はだれでも嫌なことがあれば落ち込みます。それは正常な反応です。ですが、それが度を過ぎれば病気になりますし、治療が必要になります。どんな症状が出るかは人によって様々です。気分が落ち込むなどのメンタル面の症状や、動悸・腹痛といった身体面の症状など、一つではなく複数の症状が現れることも多いです。こうしたストレスが原因となって様々な症状が出てきてしまう疾患が「適応障害」です。

適応障害の原因・症状

就学や就職、転職、結婚、離婚など、生活環境が大きく変わった際に発症するケースがよく見られます。ご本人が「新たな環境にうまく適応しなくては」と思ったとしても、なかなか思い通りにいかないことがあります。そのような環境変化のストレスが原因となりうるのです。多くの場合、生活の変化や強いストレスのかかる出来事が生じてから1ヶ月以内に発症すると言われています。
情緒的な症状としては、抑うつ気分、不安、怒り、あせり、緊張などがあります。身体症状としては、不眠、のどの異物感、胸の圧迫感、動悸、食欲不振、全身倦怠感、疲頭痛、肩こり、腹痛、めまいなどに悩まされます。

適応障害の治療

適応障害の治療に先立ち、まずは原因となっているストレスを軽くし、適応しやすい環境を整えることが重要になります。ただし、実際には環境調整が難しいケースも少なくないので、薬物療法を行います。不安や不眠などに対しては抗不安薬、うつ症状が強くうつ病の診断基準を満たしてしまいそうな場合には抗うつ薬を用いることもあります。またご希望に沿って漢方薬で治療を行うこともできます。
心理士による心理療法としては認知行動療法や問題解決療法を取り入れます。このうち認知行動療法では、ストレスの原因に対する受け止め方のパターンにアプローチし、ストレスにうまく対処できるように考え方の変容を促します。問題解決療法では、現在抱えている問題と症状自体に焦点を当てて一緒に解決策を見出していきます。こうした治療によって徐々に症状が改善していきます。