
寝つくことができない場合、あるいは寝つくことはできても、夜中に目が覚め、1度目覚めてしまうと朝まで眠ることができずに悶々としているうちに朝がきてしまい、眠った気がせずにだるさが残っているという状態が続くことがよくあります。そのため、昼間に寝てしまい昼夜の生活が逆転してしまうケースがあります。
心に現れる主な症状
- ベッドに入ってもなかなか眠れない
- 夜中に何度も目が覚めてしまう
- 眠れないことへの不安が募る
- 日中もぼんやりし、集中力が低下する
- 気分が落ち込みやすくなる
体に現れる主な症状
- 朝起きても疲れが取れない
- 頭痛や肩こりが続く
- 胃腸の調子が悪くなる
- 動悸や息苦しさを感じることがある
- 免疫力の低下による体調不良
寝たくても眠れない、夜中に目が覚めてしまい
熟睡できないことで起こりやすい
主な病名
睡眠障害
睡眠障害とは、睡眠に関して何らかの障害が生じている状態です。代表的な疾患としては、不眠症があります。これは、「なかなか寝付けない」、「睡眠の途中で目が覚めてしまう」、「熟睡した感じがしない」といった症状が起こるため、日中に過剰な眠気に襲われてしまい、仕事や学業に影響がでるようになります。また、睡眠障害が長期間続くと、生活習慣病やうつ病になりやすくなったり、さらには内臓に負担がかかったりするので、健康に害を及ぼしてしまいます。
睡眠障害の原因・症状
睡眠障害は、環境的な要因や心理的要因、身体的要因、生活習慣的要因など、様々な原因が組み合わさって起こります。環境的要因としては、海外旅行からの帰国時、枕や寝具が合わない、部屋の温度が高すぎる、逆に低すぎる、周囲の音がうるさいといった要因があります。心理的要因には、家族などの親しい人の死、仕事のストレス、対人関係のトラブルなどが考えられます。身体的要因としては、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、心臓病、呼吸器疾患、アレルギー疾患などが考えられます。主な症状としては、下表のようなものがあります。そのようなときは、お早めに当クリニックをご受診ください。
また不眠症の背景に適応障害やうつ病、双極性障害、統合失調症などが隠れている場合も多いです。その他にもベンゾジアゼピン系睡眠薬の連用によって耐性ができてしまっている場合や飲酒習慣のために眠りが浅くなってしまっている場合など、眠れないと一口に言っても様々な原因があります。
治療
睡眠障害の治療は、薬物療法と非薬物療法に大別されます。このうち薬物療法は、患者さんの症状に合わせたお薬を使用します。寝つきが悪い、途中で起きてしまう、早くに目が覚めてしまうといった症状に応じて、効果的な睡眠薬が処方されます。なお、服用していた睡眠薬をいきなり中止してしまうと、けいれんや意識障害、振戦、不眠や不安など様々な症状が現れる場合があります。処方されたお薬は、用法や用量を守って、正しく使用してください。
薬物療法だけでなく、生活習慣の改善などによる非薬物療法を行うこともあります。室温や部屋の明るさなどの環境要因を調節することにより、睡眠が得られやすくなります。音楽や読書などでリラックスし、睡眠障害が軽減することもあります。朝日をしっかり浴び、昼寝はしない、どうしてもしたければ15時前の2-30分だけにする、眠気を感じてから布団に入る、など日々の生活から改善できることはいろいろあります。手強い不眠の方には睡眠表をつけてもらい、その表をもとに日々の生活をどう改善していけばいいか一緒に考えていきます。
うつ病
日常生活や社会生活の中で、一時的に気分が落ち込んだり、悲しい気持ちになったりすることが誰にでもありますが、通常は時間の経過とともに解消されていきます。しかし、この憂うつな気分が長期間にわたって続いてしまい、日常生活などに支障が出るようになっているときは、うつ病の可能性があります。男女別では、女性に多いと言われており、とくに妊娠や出産、更年期などによくみられます。若い世代だけでなく、加齢に伴う心身機能低下や社会的な役割喪失への不安などで起こる「老年期うつ病」もあります。
うつ病の原因・症状
うつ病の詳しい原因は分かっていませんが、ストレスがうまく処理されず、心と体のバランスが崩れ、脳の働きになんらかの問題が起きて発症すると考えられています。うつ病の患者さんに対して、「ご自身の頑張りが足りないからだ」、「甘えているせいだ」などの誤解を持っている方も少なくないですが、うつ病は医療機関での治療が必要な脳の病気です。下表のような症状がみられたときは、ご自身だけで悩まず、精神科を受診して専門の治療を受けるようにしてください。
うつ病の治療
うつ病の治療にあたっては、まず患者さんのお話をじっくりとお伺いしたうえで、主に薬物療法を行います。基本となるのは抗うつ薬ですが、この中には幾つかのタイプがあるので、患者さんの症状や状態に応じて使い分けます。なお、抗うつ薬による効果が現れ始めるまでに通常1週間~3週間かかります。効果が現れないからといって、すぐに薬を止めてしまうのはあまりおすすめできません。もし眠気やふらつき、吐き気などの副作用がでてきてしまうせいで内服の継続が困難となっているのでしたら他の選択肢をご提案することもできますので、ぜひご相談いただければ幸いです。
また、再発を防ぐために、完全に症状が無くなった後も飲み続けることが大切とされています。統計的には寛解後1年以内に40%、15年以内に85%の再発を認めると言われており、治療には非常に長期的な視点が必要です。寛解してから少なくとも1年程度は内服を継続した方が再燃リスクは下げられると診察室ではいつも説明していますが、それまでの経過やその時の状態によってはそれよりも早く中止することもできますので、お気軽にご相談して下さい。ただ一部のお薬は内服を続けておくことによって再発率が下げられる効果が認められているものもありますので、使っているお薬やそれまでの経過によっては「飲み続けておく方が安心」という場合もあります。抗不安薬や睡眠薬などを併用しながら、その時に一番合った選択を一緒に考えていきましょう。
薬物療法以外では、精神療法もよく行われます。これは心理的側面から精神疾患の治療を図る治療法のことであり、医師や心理カウンセラーなどが、患者さんとの対話を重ねて問題解決の方法を探します。例えば、認知行動療法によって物事の捉え方や問題となっている行動を見つめ直し、自分の陥りやすい思考や感情パターンを理解していきます。これによって心をうまくコントロールしていきます。
不安障害
不安障害とは、強い不安や恐怖を感じる精神疾患で、不眠の症状を引き起こすことが多くあります。
不安障害の原因・症状
仕事や家庭の問題、人間関係の悩みなどが原因となることが多く、不安感が常に続く、突然の動悸や発汗、息苦しさを感じるなどの症状が現れます。また、不安によって寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりすることがあります。
治療
不安障害の治療には、抗不安薬や抗うつ薬の処方、心理療法(カウンセリングや認知行動療法)が行われます。また、深呼吸やストレッチなどのリラクゼーション方法を取り入れることで、不安を軽減し、眠りやすくなることもあります。
眠れない日々が続くと、心身の健康に大きな影響を与えます。一人で悩まず、専門の医療機関に相談することで、適切な治療を受けることができます。お悩みの方は、お気軽に当クリニックまでご相談ください。